
2007年4月19日(木)11時より、茨城県つくば市にある日本自動車研究所(JARI)において、走行中の二台の車両を衝突させる「出会頭事故」を想定した実車衝突テストが公開されました。
このテストは、従前よりJAF(日本自動車連盟)がクルマの使用に関する様々な検証を継続的に行っている「JAFユーザーテスト」の一つとして実施されたものです。
後席シートベルトについては、JAFと警察庁が昨年(2006年)秋、合同で実施した調査結果を見ても、後席シートベルトの着用率は、高速道路12.7%、一般道路7.5%と、前席着用率(運転者93.8%、助手席同乗者80.4%台)と比べ、かなり低い状況にあります。
今回のテストは、当協会の理事を務めている、JAFの薮下正三氏が中心となって、半年前より準備を進めてきたもので、クルマに関する様々な諸問題にスポットを当て検証し、その結果を公表する「JAFユーザーテスト」の一環として実施されました。
これまでの衝突テストは、車両をバリア(壁)に直接衝突させていましたが、今回のテストでは、従前のテストとは異なり、走行中の2台の車両を衝突させることによる「出会い頭事故」を再現し、その結果として「後席シートベルトの効果(3点式ベルトと2点式ベルト)」と「後席シートベルト非着用の危険性」について、検証していきました。
前席シートベルトについては、昭和60年(1985年)9月に装着義務化され、それと併せて高速道路等における反則点が導入、その翌年10月に一般道における反則点制度も実施されるようになり、今日まできたという経緯があります。

これまで過去にJAF等が行われてきた衝突テストのほとんどは、車両を直接バリア(コンクリート壁等)に衝突させるものでしたが、今回は、走行中の2台の車両(「車両T(セルシオ)と「車両U(1BOX車 ノア)」)を 衝突させて、出会い頭事故を再現しました。
テストでは、まず「車両T(セルシオ)」が誘導路よりワイヤに牽かれて時速22.5Kmで走ってきます。その左側面に、同じく直角方向にある誘導路から牽かれて時速45.0Kmで走ってくる「車両U(1BOX車 ノア)」の前面が衝突するというものでした。
衝突の瞬間、大音響とともに双方の車両の窓ガラスが飛び散り、被害車となる車両T(セルシオ)の左側面が大きく破損しながら、右方向に押し出され、本来の車線を逸脱する形で停車しました。
今回のテストにおける車両T(セルシオ)の役目は、あくまでバリア(壁)としての存在なので、衝突時に見る出会い頭事故の挙動を確認するだけで、車内に搭載された三体のダミーの挙動等は特にクローズアップされないとのこと。しかし、時速22.5Kmの徐行程度のスピードで走行でも、大きな衝撃を受けることになるという、事故の恐ろしさを、改めて認識することができました。
一方の車両U(1BOX車 ノア)も衝撃でフロント部が破損し、進行方向左に引き吊られました。衝突そのものは、「あっと」いう間の一瞬の出来事で、衝突の凄さと高スピードでの衝突を想像した恐ろしさを実感。
衝突後に、目にした4体のダミーの状態を確認しながら、カメラ撮影させていただいた時には、改めてシートベルトの必要性を確認。

【時速45Km衝突の瞬間】
大音響とともに双方の車両の窓ガラスが吹き飛んだ

【衝突時の車内の様子】
手前は後部左席の3点式ベルト着用の女性ダミー
中央席は2点式ベルト(学童用シート)着用の6歳児ダミー
後部右席はベルト非着用で前方に投げ出され前席に激突する女性ダミー

(1)後部左席
3点式ベルトを着用
「女性ダミー(145cm・45kg)」
女性ダミーは、腰ベルトと肩ベルトによる乗員拘束効果が確認できました。やはり3点式シートベルトの着用は重要だと再認識できました。

(2)後部中央席
2点式ベルト+学童用シート使用「6歳児ダミー(120cm・22kg)」
6歳児ダミーは、腰ベルトによる骨盤のみの拘束であるため、前方に投げ出されることはないものの、上半身がかなり前方に屈曲し、その後横に倒れ、腹部への損傷があったのではないかと予想する。

(3)後部右席
シートベルト非着用
「女性ダミー(145cm・45kg)」
女性ダミーは、衝突の瞬間、前方に投げ出され、Bピラー(中央柱)や前席シートバックに衝突し、見た目にはかなり強いダメージの様子が伺えた。

(4)運転席
3点式ベルトを着用
「男性ダミー(175cm・78kg)」
前席ドライバーダミーは、頭部等を、後席乗員からの激突を受けて危害が加わり、押し出されたシートバックと前方から展開する予定のエアーバックに挟み込まれ、被害を受けるものと予想しされていましたが、衝突エネルギーが横方向に分散され、しっかりと締めていた3点式シートベルトの機能だけで、乗員保護が果たせると車両側が判断したため、エアーバックは展開されず、腕等にダメージがある様に確認できたものの、被害は少ないように見えた。
以上、一目瞭然にて、命を守るシートベルトは、運転席、助手席だけでなく、後席においても3点式のものを着用することが、事故から命を守る上で大切であることを再認識することができた。
この衝突テストは、日本で二番目に多い「出会い頭事故」を再現されたものでしたが、どのような事故であっても、運転するもの、乗車するもの、私たちクルマを利用する全ての方々が、唯一自分の意思で出来る安全対策がシートベルトの着用であることが理解できました。
教習所指導員として指導に当たるものにとっての職責として、この「自分の意志で出来る唯一の安全対策」シートベルト着用の必要性を教えていくべきではないでしょうか。
最近では窓ガラスの大きい人気のミニバンを利用する人が、後席シートベルト着用をしないことによって車外へ放出される事故も増えています。私たちの多くが、頭では理解していても法律で義務付けられなければ、なかなか後席シートベルトを締めていないのが現実です。
これからは、ひとり一人が率先して、このような交通事故の撲滅に務めると同時に、「命を守るシートベルト着用徹底」の啓蒙活動を持って、交通死亡事故を限りなく「0」に近づけて参りたいと願います。
(やました きみこ)